第61回選抜高校野球大会

平成2年3月28日の記事(福井新聞より) 炎の福商12回力尽く

【5回裏福井商2死2塁、水町の左前打で渡辺がかえり2-2の同点とする】
【評】優勝候補の一角、強打の享栄を相手に、堅守とソツのない攻めで優位に試合を進めた福井商。勝利まであと一歩、勝利の女神を何度も眼前にとらえながら、享栄・高木の投打にわたる奮闘に行く手を阻まれ、延長十二回力尽きた。しかし猛打をしのぎにしのいだしぶとさは、春夏八季連続出場(戦後新記録)の福井商にふさわしい戦いぶりだった。
四、五回に1点ずつを失い2点を追う福井商。五回裏、守りに不安のある享栄に猛然と襲い掛かった。死球の中村を松本が送り、暴投で三進。花山が2-2から意表を突くスリーバントスクイズを決め1点、自らも生きた。渡辺の投ゴロで二封されたが、悪送球を誘い二死ながら渡辺が二塁に残った。ここで水町が甲子園初安打を左前に弾き返し、同点に追いついた。
さらに中村四球の後、北山の中飛は二塁手が深追いし中堅手が落球。水町、中村と相次いで生還し4点目。享栄の3失策に助けられたものの、この回、バントを絡めた執ような攻めで試合をひっくり返した。
六回裏一死後、再び仲村の死球から好機をつかんだ。松本がきっちり送った後、花山が右中間を深々と破る三塁打、渡辺も右前打と続き2点を追加。配球が単調になった高木の直球を狙い打った見事な連打で6-2と突き放した。
福井商・中村は、六回まで8安打を浴びながら内外角への制球と得意のカーブ、さらに内野陣の攻守で最少点に抑えてきた。しかし終盤に入って球威が落ち始めた。七回には高木に右翼へライナー性の2点本塁打、八回には所に左越え適時三塁打、九回には高木に再び一発を浴び、試合は振り出しに戻った。
だが福井商もあきらめない。九回裏、先頭の渡辺が遊ゴロ失で出塁。バントの後、北山が右前に落とし二死一、三塁。しかし高嶋は三振。十、十一回にもサヨナラ機をつかんだが、自らの2本塁打で立ち直った高木のカーブに手が出ない。サヨナラのホームはあくまで遠かった。
逆に享栄は十二回、5長短打を集めて3点。3時間26分に及ぶ福井商の粘りも通じなかった。

【北野監督】
ラッキーな面もあってこちらに勝利が転がってくるかなと思ったが、、、最後の1本が出なかったのはこちらに本当の精神力がなかったため。相手の力もすごかった。しかし選手はよく頑張ってくれた。これを契機に夏に向けてさらに頑張って練習していきたい。

【花山主将】
序盤は良かったが終盤に入って息切れした。バッティングで監督に教わったことを実行できず守備もいま一つだった。勝てる場面が何回もあったのにチャンスを生かせなかったのはまだまだうちが未熟ということ。夏に向けて全員で頑張りたい。

平成2年3月28日の記事(福井新聞より) 粘り身上 腕ちぎれても・・・202球

【勝利まであと一歩と迫りながら惜しくも敗れた福商ナイン】
強打・享栄を相手に延長十二回、202球を投げたエース中村。「向こうは優勝候補。ここまで戦えて少しは満足、でも勝ちたかった」と天を仰いだ。
この日は決め球のカーブの制球力が良かった。六回までに2点に抑える好投。「とにかく長打をくわないように」(北野監督)の指示通り、六回まで丁寧に投げすべて単打に抑えた。享栄の大砲・湯浅に対してもカーブを武器にタイミングを狂わせ3三振を奪う力投。
しかし6-2とリードを奪った7回以降「勝ちにいって投げ急いだのはいけなかった。序盤で飛ばしすぎて中盤から腕が痛くなった」
7、9回に高木に二打席連続ホームランを浴びた。「相手がうまかった」と中村は高木を称えるが、表情からは悔しさがにじみ出ていた。
腕が痛くなっても「気力で負けないように」投げ続けたが、十二回5本の安打を浴び力尽きた。
中村が投手になったのは新チームになってから。北信越大会で成長し、ひたすらこの日に向けて走り続けてきた。
「享栄戦で粘りを身に着けたのが収穫だった。また夏に向けて頑張るしかない」とキッパリと話していた。