第78回全国高校野球選手権より その1

平成8年8月9日の記事(福井新聞より) 福商はつらつ完封劇

【福商はつらつ完封劇】
【評】福井商が持てる力をフルに発揮した。終始伸び伸びとプレー、伝統の堅守に加え、打線も絶好調。亀谷の三塁を踏ませない熱投も光り、開幕試合を危なげなく飾った。
福井商が二回、鮮やかに先制した。四球、犠打、亀谷の単打などで一死二、三塁の好機に、浅野が前進守備の右翼手の頭を軽々と抜く三塁打で2点。初回、無死三塁で無得点に終わるいやな雰囲気をひと振りで払しょくした。
三、四回は自慢の足を見せてくれた。まず三回は、碧山が右前打、清水が敵失で一、二塁とし、碧山が三盗を決行、暴投となる間にホームを陥れた。四回も亀谷の左翼線二塁打から浅野の敵失を誘う犠打で一、三塁とした。一死後、打者は中川。遊撃正面の当たりだったが一塁へ全力疾走、併殺を免れる間に亀谷が得点。じりじりと弘前実を苦しめた。
七回にも犠打を絡ませ二死三塁とし主砲・清水の三遊間を抜く適時打で試合を決定付け、八回は竹野の大会第1号となる左翼席への本塁打でとどめを刺した。
先発・亀谷も一~四回は先頭打者を出すが捕手・清水の二つの盗塁刺殺や、バックの鉄壁の守りでリズムに乗った。後半はスライダー、カーブがおもしろいように決まった。弘前実の拙攻にも助けられ、三塁を踏ませない好投で9奪三振の完封。投打の歯車ががっちりかみ合い、センバツ開幕試合での完封負けのお返しをした。

【北野尚文監督】
センバツで開幕試合を経験しているだけに、選手はさすがに緊張はなかったと思う。攻撃面で細かいミスはあったが、亀谷(投手)を中心によく守ってくれた。2回戦までに細かいプレーを鍛えなおしたい。久しぶりに校歌が聞けてほっとしている。

平成8年8月15日の記事(福井新聞より) 走る福商フルパワー

【走る福商フルパワー】
【評】福井商が今大会最多タイとなる先発全員の18安打の猛攻で圧勝した。10盗塁、5犠打と機動力も思い存分発揮。八頭のミスにも乗じ楽々と、平成元年以来の夏2勝目を完封リレーで飾った。
福井商の先制点はあっけなかった。二回、竹野が右前打し二盗、浅野の内野安打と塚田の犠打で、一死二、三塁。亀谷がスクイズバントを空振り、竹野が三本間に挟まれ二死二塁となったが、亀谷は四球、続く安達の時に八頭・兵頭が連続暴投し、難なく2点を入れた。三回は河合の右中間三塁打、清水の四球で二死一、三塁とし重盗。河合がホームを陥れた。塚田の遊ゴロが敵失となる間に、2点目。再び適時打なしで得点を重ね、楽になった。
四回は、打者十人を送り込む素晴らしい攻撃を見せた。四球の安達、バントヒットの中川を河合が送り、碧山が左前にポトリと落として、まず2点。碧山が三盗を決め、清水が右犠飛を上げると、竹野は中越えに2試合連続の本塁打をたたきこんだ。
攻撃の手を緩めない福井商はさらに、浅野が中前にはじき返して二盗、三盗。暴投で加点した。この回一挙6安打を集中。試合を一方的なものにした。五回には碧山の犠飛、七回にも清水の適時二塁打で着々と加点。11点を奪い取った。
先発・亀谷は初戦に続き連打を許さず三塁を踏ませない10奪三振の快投。九回には故障で出遅れていた鈴木も登板し復活をアピールした。

【北野尚文監督が試合を振り返る】
選手はよくやってくれている。相手のミスで先制でき楽になれた。「打線がよく振れていた」と言われたが、相手が初戦で硬くなっていただけだと思う。そんなに打てるチームではない。目に見えないミスもあったし、3回戦までにまた鍛え直したい。

【河合洋平主将が試合を振り返る】
会心の試合運び。盗塁もバントもみんなよく決めてくれ、うちらしい野球ができた。記憶にないほどよく打った。取れる点を徹底的に取って攻撃のリズムを崩したくなかった。亀谷もよく踏ん張ってくれたし、ムードは最高。次も全力で戦います。

平成8年8月15日の記事(福井新聞より) 竹野2試合連続アーチ 無心の一振りでっかい勲章

【竹野2試合連続アーチ 無心の一振りでっかい勲章】
竹野がまたしても見せてくれた。四回、2試合連続となる本塁打。カウント2-3からの直球をたたくと、打球はぐんぐん伸びてスタンドに吸い込まれた。「ヘッドがうまく振りぬけた。今大会ホームラン2本は僕だけ。うれしい」と顔をほころばせた。
試合前、室内練習場で北野監督から「振りが大きくなっている」と注意された。1回戦の本塁打で気が大きくなりバットを振り回していた。第1打席に右前打を放ち、2打席目。「今度はでかいのを」と大振りし三振した。
「今度こそコンパクトに振りぬこう」と打席に入った。思い通りのスイング。「詰まった」という打球は甲子園で一番深い、バックスクリーン横に飛び込んだ。
166センチの小さい体が生み出すパワーの秘けつは、家でも欠かさない筋力トレーニングと昨年からチームが導入したイメージトレーニング。カードを使うイメージトレーニングの成果は、県大会の準決勝から出てきたそうで「無心で打席に入っている」という。
ナインからは「次は清原(現・西武)の記録(大会5本)を破るだけだな」と冷やかされても、本人はいたってマイペース。
「僕はホームラン打者じゃない。横浜のピッチャーは球が速い。上からたたいて、ヒットを狙います」。六番から五番に上がり、期待にこたえた中堅手は、謙虚に言い切った。

平成8年8月15日の記事(福井新聞より) リリーフ鈴木きっちり

【リリーフ鈴木きっちり】
右ひじを痛めていた鈴木が最終回1イニングを投げ、復調をアピール。春のセンバツ以来、久しぶりの大舞台での登板に「気持ちよかった」。
七回裏、「いつでもいける準備はしていた」鈴木に北野監督から声が掛かった。亀谷が1回戦に続き、好投していただけに少し焦りがあったという鈴木。はやる気持ちを抑えてマウンドに上がった。
「春に比べ余裕があった」(鈴木)甲子園のマウンドで、右ひじの感触を確かめるように一球、一球投げ込んだ。カーブが高めに浮き長打を許したものの、まずまずの内容だった。
一塁を守っていた亀谷から受け取ったウイニングボールを握りしめ「公式戦で投げられてホッとしています」。チームの勝利と、チームに貢献できる喜びが重なり、鈴木の顔に笑みが広がった。

平成8年8月15日の記事(福井新聞より) 準優勝OBエール

【準優勝OBエール】
「さあ!3回戦も勝って、初めての夏3勝だ」。スタンドには野球部OBも大勢詰めかけ、早くも次の試合に向けて、投打に圧倒した後輩の大活躍にエールを送った。
松島章雄さん(34)はセンバツ準優勝を飾ったときの二年生。この時はベンチには入れず、スタンドから先輩の晴れ姿を見つめたが、翌年の春は二番、二塁手で甲子園の1勝を経験している。
「準優勝のときの方が戦力のバランスはとれていたが、今年のチームには足がある。大きなエラーがなく、守りが堅実なのも特徴」と分析。さらに「亀谷は鈴木の影に隠れていたが、上手投げを横に変えたのがよかった。ハートも弱かったのに今年の夏は自信を付け、見違えるようになった」と、後輩の成長を喜んだ。
昭和六十二年卒業の安井正樹さん(28)も三年の夏に六番、二塁手で甲子園の土を踏んだ。三回表、清水捕手が二盗を刺すと「清水は今大会(盗塁刺殺)パーフェクト。亀谷も安定しているし、バッテリーは安心して見ていられる」と興奮。
このほか同五十五年から六十三年までに卒業したOB九人が、スタンドの一画陣取った。快勝での2勝目が決まると「さあ!次も頼むぞ」と夏の甲子園で初めての「福井商3勝」に向けて、後輩球児に活気ある声援を響かせていた。